家族が暮らした築90年の古民家が、
多くの人でにぎわうカフェに
黒い和モダンな外観に、ひときわ目立つ「かふぇ あんど ぱすた」と書かれた赤いのれん。中に足を踏み入れると、梁がむき出しになった吹き抜けの空間が広がり、店中に淹れたての珈琲の良い香りが漂います。
築約90年の旧家を、カフェへとリノベーション。昭和6年に竣工された住居は、施主であり、カフェのオーナーでもあるI様の祖父母の家でした。
「カフェに改装しても、長い歴史を重ねた家の良さを残したかった」と話すI様。
仕口や継手など昔ながらの伝統工法、年月とともに自然な風合いを重ねた古木材など、古民家の名残を魅力とする店づくりを考えたそう。
三幸建設にリノベーションの相談をしたときは、「特に、天井部分の大きな梁を印象的に使ってほしい、と伝えました」。
結果、小屋組みが見えるように、1階部分の天井を取り払った設計に。
飲食スペースから見上げると重厚な梁がアクセントになり、また吹き抜けにしたことから、2階部分の窓から店内に優しい自然光が差し込みます。
I様がもう一つこだわったのが、ステージ。「ジャズが趣味で。誰でも気軽に音楽を楽しめるように、自分の店にステージがあったら、というのが夢でした」。防音設備に取り入れたのは、木毛セメント板。防音性・吸音性に優れているのと同時に、調湿性もあり、質感も古材に合うため、採用されました。
「僕がこだわったのはこの2つ。あとは、正直、ほぼおまかせ(笑)。
予算の範囲内でこれだけはお願いします、と設計士さんに頼みました。
担当してくれた設計士さんは、僕と好みのテイストが似ているのか、思い描いていた以上のデザインに仕上げてくれて満足しています」
店内に飾られている柱時計などの雑貨、ピアノや音響機材なども、店に合わせたクラッシックなものばかり。
「この中の何点かは、旧家で使っていたものなんですよ」とI様。
「この店が食事どころとしてだけじゃなく、イベントをしたり、情報を発信したり、多くの人が集える場所として愛されたらうれしいですね」